新潟県燕市――世界に誇る金属加工の町として知られるこの地で、 創明工芸は1985年、恒成株式会社の開発部としてその歩みを始めました。 弱電部品、建築外構材、食品工場向けタンク、理化学用品、スポーツ設備など、 私たちが手がけてきた製品のほとんどは企業向けであり、 「産業を支える裏方」として、確かな技術と誠実なものづくりを積み重ねてきました。
2003年には開発部門が独立し、株式会社創明工芸として新たなスタートを切ります。 その後もステンレス加工技術を磨き続け、TIG溶接、研磨、パイプ加工、組立といった社内技術に加え、 協力工場とのネットワークを活かして板金、レーザー、真空処理、旋盤加工など、 ステンレス加工のほぼ全領域をカバーする体制を築いていきました。
その中で、創明工芸の技術の象徴ともいえるのが、 平面型・角型・異形型など、他社が断る難形状の真空断熱容器を製作できる技術力です。 一般的に真空断熱構造は円筒形が主流で、角型や平面型は「製作不可」とされる領域。 しかし私たちは、長年のノウハウと高度な溶接技術を組み合わせ、 研究機関向け断熱BOX、検査装置用カバー、発熱体保護ケース、特殊サイズの保冷・保温容器など、 百社を超える企業・研究機関の開発案件に携わるまでに成長しました。

2020年、世界はコロナによる未曾有のパンデミックに見舞われました。 社会は混乱し、価値観は大きく揺らぎ、 「当たり前」が当たり前ではなくなる時代へと突入しました。
その混沌の中で、創明工芸もまた自らに問い直すことになります。
――私たちの技術は、これからの社会に何をもたらせるのか。
――世の中に本当に必要とされる存在であるために、何を創るべきなのか。
その問いを深めていく中で、私たちは障がい福祉の現場が抱える深刻な課題に気づきました。 仕事が少ない、収入が安定しない、役割が限定される―― 多くの福祉事業所が混迷の中にあり、利用者の自立支援が難しい状況に置かれていたのです。
「私たちの技術で、この課題に貢献できるのではないか。」
その想いが、創明工芸の新たな挑戦の原点となりました。
創明工芸には、クリーニング事業者向けに独自開発してきた 水流型洗濯機『てあらい機 はごろも』 があります。
一般の洗濯機では洗えないデリケートな着物生地を、 生地を傷めず、誰でも簡単に洗えるように設計されたこの機械は、 高度なウェットクリーニング技術がなくても扱える、私たちの技術の結晶です。
この機械を福祉の現場に導入することで、 利用者の方々が「洗う」という役割を担えるのではないか。 そして、古着物を再生する工程の中で、 新しい仕事と自立支援の仕組みをつくれるのではないか。
そう考えた私たちは、2022年に engimonoプロジェクト を立ち上げました。

古着物をリメイク素材として再生するためには、 洗浄だけでなく「解き(ほどき)」の工程が欠かせません。 しかし、呉服店では専門技術として高額になるこの作業は、 一般の人にはなかなか依頼しづらいものでした。
そこで私たちは、福祉事業所と連携し、 利用者の方々が「解き」作業を担える仕組みを構築しました。
一針一針、丁寧に縫い目をほどき、 反物に近い一枚の布へと戻していくこの作業は、 集中力と丁寧さが求められる工程であり、 福祉の現場にとって新しい就労機会となりました。
「洗う」「解く」という着物再生の要となる工程が、 福祉の現場での役割となり、 利用者の自立支援につながる循環が生まれたのです。

日本は世界でも類を見ない高齢社会へと進み、 タンスに眠る着物が次世代に受け継がれないまま廃棄されていくという現実があります。 これは、和装文化そのものが途絶えてしまう危機でもあります。
一方で、経済産業省や文化庁は和装振興に力を入れ、 着物の質感、意匠、そして「解いて再生する」という日本独自の循環文化は、 海外でも高く評価されています。
着物は、ただの衣服ではなく、 日本の美意識と技術が凝縮された文化資源なのです。
こうした背景の中で、engimonoプロジェクトは 環境(廃棄抑制・ごみの減量化) 自立支援(障がい福祉) 文化継承(和装振興) という三つの柱を一つに束ね、 多様なステークホルダーと「和」をつくりながら、 社会課題の解決と日本の未来づくりに挑んでいます。
古着物を捨てずに生かし、 福祉の現場に新しい役割を生み、 和装文化を次世代へつなぐ。
この三つの循環が重なり合うことで、 地域と社会に新しい価値が生まれます。

創明工芸は、これまで産業を支える裏方として技術を磨いてきました。 しかしこれからは、技術を社会に開き、 地域と未来に貢献する存在として進化していきます。
技術で応え、創造で超える。 “できない”を“できる”に変える。
その精神を胸に、 私たちはこれからも、技術と人の力で新しい循環を生み出し続けます。
